26人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
第3話 #3
「お母さん、強かったですね。
あと30分遅かったら危なかった」
N病院で蘇生措置施された母は、
何とか一命をとりとめた。
救急病院の集中治療室で、酸素マスクを装着しているけれど、表情は穏やかになっていた。
「ありがとうございました」
医師に頭を下げる。
「狭心症の薬は飲まれていたみたいだけど、心筋梗塞の疑いもあるので、一度カテーテル検査された方がいいかもしれませんね」
また、これからも、
こんな危険な事になりえることを、 さりげなく告げられて、
「強い発作は、どんなときに起こりますか?」
これから母を一人にさせるのは難しいかもしれないと思った。
「一番は、ストレス、心労と、寒さや脱水もダメだし、運動不足や過度な運動も気をつけてくださいね」
「…………はい」
ストレスかあ……
芹南のことで、心配かけすぎたかな?
眠る母を見ながら、反省するしかなかった。
『………………煙草……吸いたいな』
集中治療室にいる看護師さんに告げてから、
喫煙所に立ち寄る。
吐く煙を見ながら、
『これも、体に良くないんだよな』
と、
一度止めたはずの煙草に手を出した己の意思の弱さもまた、反省課題だった。
病院の外にある喫煙所、
周りの樹木たちは、秋の色を濃くし始める。
寒いのは好きじゃない。
今年はさみしい冬になりそうだ。
「……佐藤?」
最初のコメントを投稿しよう!