第3話 #4

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その日は、午後から正造が病院に向かったため、 ケーキ仕上げの方も山岡工場長が仕切って1日の業務を終了した。 「社長、退院できないんだろうね」 「もし、亡くなったら、会社潰れたりしないのかな?」 見習いパティシエや、他の正社員の男性たちから、そんな不安な声も聞かれた。 工場の床を最後にモップがけする山岡さんの背中を見ながら、 ふと、 社長に誘われて ここに腰を納めたこの人は、 最悪な場合、この店から去るんじゃないかと、 そんな思いがよぎった。 「山岡さん」 「なんだ?」 道具や機械を拭いて、工場長にさりげなく 「正造さんのこと、嫌いですか?」 今後に繋がることを聞いてみる。 「なんてこと聞くんだよ? そんなこと聞いて、アイツにチクる気じゃないだろうな?」 ………さりげなく、でもなかったか。 「そうじゃなくて………」 これ以上、 正造に孤独感なんかを味あわせたくはなかった。 彼の負担が、 これ以上増えることを、 防ぎたかった。 「俺は ここの古臭い感じのお菓子が好きなんだよ」
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