第3話 #4

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緊張しながら、玄関の覗き穴を見ると、 『あ……れ…1人?』 自宅アパートを訪れてきたのは、 元夫の優だけだった。 「調停人は?」 ドアを開けて、元夫の周囲を見回す。 「裁判所から呼び出される日が決まったから、その前に話し合いたかったんたけど……… 他にもたくさん事案抱えてるらしくて来れなくなった」 きっと、 嘘だ。 「おかしいと思ったんだ。何で、弁護士がうちに来るんだろって」 裁判所に呼び出されて、話し合いをするって聞いたことあったから。 「とりあえず、お互いの条件を提示し合おう。 一回の話し合いで済むように」 妙に落ち着いた優は、 半分開けたドアを左手で、完全に押し開けた。 「………………………外で話そう」 家の中に入れたくない。 もう、 他人なのだから。 「じゃ、手短にここで。」 「………………………」 ″手短って、なによ?芹南の一生のことなのに ″ 「こんばんはー」 アパートの滅多に会わない隣人が、帰宅してきて、 優に挨拶をしている。 若い男子学生だ。 それをシカトして、 「………………お前が早急に、親権なんかを俺に譲ってくれたら、 養育費と同額、毎月お前に払うよ」 優は、事を簡単に運ぼうとしていた。 「それは、断る」 欲しいのは、慰謝料じゃない。 ″ 芹南 ″ 「ふぅん。強気だな。 だけど、こっちが下手にで出るうちに飲んだほうがいいぞ」 ずっと愛していける家族が欲しい。 「下手に出るも何も、 あんたは、私より悪い立場にいるのよ?わからないの?」 お互いを傷つけるような 曝し合いだけは、防ぎたい。 「立場が悪い?」 ドアを押さえていた手をゆっくり下ろして、 バタン! と 優は 玄関の中まで入ってきてしまう。 「………………ちょっ?!」 「それは、アルバイトで生計たててるお前だろ?」
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