第3話 #4

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それを知ったのは、 社長が国立病院に搬送されて、正造と事務員さんがそれに付き添い、 夕方になってもオーナーが戻らない会社で、 山岡さんたちと工場を掃除しているときだった。 「山岡さん、知ってたんですか?」 「いや、今日事務員から聞いてびっくりしてる。」 「………………肝臓ガンって治るんですかね」 「発症して四年以上経ってるらしいから、厳しいかも。 社長が手術したり入院したりした記憶はねぇな」 「どうなるんですかね?ここ」 和菓子の川島さんも布巾を漂白剤につけて、それを見てため息をつく。 四年か ちょうど、正造が東京で芸能界を引退した時期と重なる。 もしかしたら、 「ここは、正造がいるから大丈夫だ」 芸能界で芽が出なかったからではなく、 店を継ぐために、急速にその世界から去らなければいけなかったのかもしれない。 「さて、工場閉めるか、 佐藤お前、先に会社でろ」 「え………」 「駐車場施錠しちまうぞ、もう誰も会社戻ってこねーから」 「はい」 今 正造はどんな思いで付き添っているのだろう? ついこの間の母を失いかけた自分と重なる。 「もう少しここにいます」 工場の奥敷地に、社長や正造が住む自宅が見えている。 もしかしたら、帰ってくるかもしれない。
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