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「……………もしかしたら、最悪な状況で帰ってくるかもしれないぞ」
工場長の言葉の意味。
それは、今夜社長が息を引き取るかもしれないということ。
「はい。それでも………」
もし、そんな悲しみの中、
慌ただしく正造が戻ってきたら
私は邪魔になるだけかもしれない。
「お前の母ちゃんはもういいのか?」
「あと、退院を待つだけです」
それでも、
そばにいてあげたいと思うのは、
愛情の押し売りに近いのかもしれない。
「風邪ひくなよ」
先に会社をあとにする山岡工場長達の車を見送りながら、
正造達の住まいをボンヤリ眺める。
″ いい日本家屋だ ″
社長の奥さんの話は聞いたことがなかったから、
社長の年齢からしても、もう亡くなられたのかもしれない。
社長と正造。
二人で暮らしていたのかな?
社長の肌の黒さは、病気からきていたのかもしれない。
なのに、
『サーフィンや日サロに通ってる?』
『社長は元気そう』
なんて、心ない発言をしてしまったのか。
後悔と、
早く会いたい気持ちが混ざりあったまま、
それから三時間ほど経過し、
いつの間にか車内で眠ってしまっていた。
「襲ってくださいアピールかよ?」
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