第3話 #4

6/35
前へ
/35ページ
次へ
「焼くのは2分でいいかな?」 手を洗いながら、オーブンから甘い香りが漂うのを満喫し、 私は一服する正造の横に座る。 リビングは、障子があって、 何故だか囲炉裏まであって、超和風。 「お前は、止めたほうがいいんじゃないの?」 「えっ?」 バックから、煙草を取り出す私を、眠たそうな目で見る。 無表情っぽいけど、この人も眠たいんだ。 「いつか、また、子供産むかもしれないじゃん」 「………………………あぁ、うん。」 だから、 結婚中は吸わなかったんだ。 また、 芹南のような子供を授かるかもしれないって。 「お前がやめたら、俺もやめるし」 「エッ?なんで?!」 そして、そんな言葉で またまた、私を惑わせるんだから。 「禁煙するときは、周りやパートナーの協力が必要なんだってよ」 「………………………」 ″ パートナー……… ″ チン!! ドキドキしだした頃にオーブンが、いい香りと音で、私を驚かせる。 「あ、いい!俺が取り出すから、お前はコーヒー入れて。ちゃんとコーヒーメーカーも粉もあるから」 「うん」 火傷なんて怖くないのにさ。 正造の後ろでメーカーにフィルターをセットして、粉二杯分に、お湯二杯分を注水する。 「どっちもいい匂い」 トマトの匂いじゃなくて、 なんだか、 「苺の匂いするな」 正造も同じ嗅覚なのか、甘酸っぱい香りのドーナッツを皿にうつし、半分にして 「ほら」 私の口の中ポイッと入れる。 「あつっ! でも、 めちゃくちゃ美味しい。」 甘さは、匂いほどではなくて、上品で そして生地表面にトマトの酸味が強い粒があり、 口の中でそれがまた美味しかった。 「色んなバージョン作りたいな、これ。」 「うん」 簡単なようで難しかった新作品作り。 楽しかった。 満足気な正造は、 コーヒーを飲んでから歯を磨き出す。 「泊まってくだろ?」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加