32人が本棚に入れています
本棚に追加
「焼くのは2分でいいかな?」
手を洗いながら、オーブンから甘い香りが漂うのを満喫し、
私は一服する正造の横に座る。
リビングは、障子があって、
何故だか囲炉裏まであって、超和風。
「お前は、止めたほうがいいんじゃないの?」
「えっ?」
バックから、煙草を取り出す私を、眠たそうな目で見る。
無表情っぽいけど、この人も眠たいんだ。
「いつか、また、子供産むかもしれないじゃん」
「………………………あぁ、うん。」
だから、
結婚中は吸わなかったんだ。
また、
芹南のような子供を授かるかもしれないって。
「お前がやめたら、俺もやめるし」
「エッ?なんで?!」
そして、そんな言葉で
またまた、私を惑わせるんだから。
「禁煙するときは、周りやパートナーの協力が必要なんだってよ」
「………………………」
″ パートナー……… ″
チン!!
ドキドキしだした頃にオーブンが、いい香りと音で、私を驚かせる。
「あ、いい!俺が取り出すから、お前はコーヒー入れて。ちゃんとコーヒーメーカーも粉もあるから」
「うん」
火傷なんて怖くないのにさ。
正造の後ろでメーカーにフィルターをセットして、粉二杯分に、お湯二杯分を注水する。
「どっちもいい匂い」
トマトの匂いじゃなくて、
なんだか、
「苺の匂いするな」
正造も同じ嗅覚なのか、甘酸っぱい香りのドーナッツを皿にうつし、半分にして
「ほら」
私の口の中ポイッと入れる。
「あつっ!
でも、
めちゃくちゃ美味しい。」
甘さは、匂いほどではなくて、上品で
そして生地表面にトマトの酸味が強い粒があり、
口の中でそれがまた美味しかった。
「色んなバージョン作りたいな、これ。」
「うん」
簡単なようで難しかった新作品作り。
楽しかった。
満足気な正造は、
コーヒーを飲んでから歯を磨き出す。
「泊まってくだろ?」
最初のコメントを投稿しよう!