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結局、お風呂にも入らずに、寝室に行くこともなく
朝の五時 目が覚めたのはソファーの上。
「寒っ」
その辺にあった男性用の薄手のロングコートを被っただけで、
二人ともティシャツと下着だけの状態で寝てしまい
身体はすっかり冷えきっている。
お風呂………貯めようかな。
正造はまだ、眠っていた。
起き上がってリビングの先のお風呂場を探しに歩く。
『無駄に廊下長くない?』
これ、朝だからいいけど、真夜中はトイレもきっと怖いよ。
カツーン!
『なんの音?』
雨戸が閉められていない縁側のガラス戸から
これまた立派な日本庭園が見えて、思わすその足を止める。
『池がある!すごい!
錦鯉が泳いでるし、竹でできた名前分かんないけど、あれもある!』
やっぱり、金持ちなんだなぁ。
しばらくその庭の美しさに見とれていると、
「親父がいなくなったら、庭師雇わなきゃいけねぇな」
いつの間にか起きてきた正造が、後ろに立っていた。
「おはよ………」
やっぱり、夜の行為の朝は気恥ずかしい。
「さみぃな、風呂探してる?」
「うん。ね、アレ、何て言うの?」
私は水を通して、音を立てる竹の名前を聞いてみた。
「えっと、なんだっけな。
″ 鹿威し ″だっけ?」
「しし?」
「昔は、野生の動物が庭荒らしに来てたから、そいつらを追い払うために作ったらしいよ」
「へぇ」
正造って、学校行ってなかったらしいのに、
そんな知識はあるんだね。
「でも、あんな上品な音じゃ動物逃げないよね?びびるの亀くらいだよね?」
「亀の方が肝すわってんじゃねぇかな?」
正造は、笑いながら
私の腕をとる。
「早く風呂ためないと、風邪ひくぞ」
そうだ。
私達の朝は、休日の朝じゃない。
社長が倒れても、
店や工場は開けなければならない。
正造の肩にのしかかるものは大きい。
私に、
その手助けは、できるのかな?
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