第3話 #5

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″ 寝ちゃったの ″ ″ セックスしたの ″ ″ 抱かれたの ″ 言葉を頭の中で選ぶけど、 どれも、 正造の前では使いたくなかった。 どれも、 正造との行為のみにしか、使いたくない言葉になってしまっていた。 「………………それ、キスって話じゃないよな?」 落胆の色さえも、色白の正造の顔には滲み出るものなのかな? その顔を見たくなかったんだよ。 「キスじゃないよ」 私は、リングケースを閉じて、それを紙袋に仕舞うと、 正造の前にスッと置いて返した。 「だから、言ったんだよ?やめとけって」 「………………うん」 はい。 何度も後悔してるよ。 ホイホイと、子供という餌に釣られた私は、 何て言う魚に似てますか? 「ちくしょ、なんなんだよ、上木優」 元夫の名前を出して、 突然、何か吹っ切ったように、 室温に戻ってしまった肉たちを、鍋に突っ込み出した正造。 「………………ごめんなさい」 「謝る暇あったら、これ、くっちまえ」 「食べれないよ、もう」 「いいから、最後の〆のうどんが食えないだろうが。罰として、全部食え」 罰……… 何の罰? あなたを不快にした罰?それとも、 優と寝てしまったこと、 これで帳消しにできるの? だけど、 「もう、無理だよ」 私の胃袋は普通サイズみたいで、 肉ばかりを詰め込んで、吐きそうになっていた。 「他なら、許してもらえるなら、 何でもするから」 腹おどりでも、一発芸でもやるよ。 腹話術だって、見たいなら、習いに行くし……… 「何でも? なら、 こっち来て」
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