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″ 寝ちゃったの ″
″ セックスしたの ″ ″ 抱かれたの ″
言葉を頭の中で選ぶけど、
どれも、
正造の前では使いたくなかった。
どれも、
正造との行為のみにしか、使いたくない言葉になってしまっていた。
「………………それ、キスって話じゃないよな?」
落胆の色さえも、色白の正造の顔には滲み出るものなのかな?
その顔を見たくなかったんだよ。
「キスじゃないよ」
私は、リングケースを閉じて、それを紙袋に仕舞うと、
正造の前にスッと置いて返した。
「だから、言ったんだよ?やめとけって」
「………………うん」
はい。
何度も後悔してるよ。
ホイホイと、子供という餌に釣られた私は、
何て言う魚に似てますか?
「ちくしょ、なんなんだよ、上木優」
元夫の名前を出して、
突然、何か吹っ切ったように、
室温に戻ってしまった肉たちを、鍋に突っ込み出した正造。
「………………ごめんなさい」
「謝る暇あったら、これ、くっちまえ」
「食べれないよ、もう」
「いいから、最後の〆のうどんが食えないだろうが。罰として、全部食え」
罰………
何の罰?
あなたを不快にした罰?それとも、
優と寝てしまったこと、
これで帳消しにできるの?
だけど、
「もう、無理だよ」
私の胃袋は普通サイズみたいで、
肉ばかりを詰め込んで、吐きそうになっていた。
「他なら、許してもらえるなら、
何でもするから」
腹おどりでも、一発芸でもやるよ。
腹話術だって、見たいなら、習いに行くし………
「何でも?
なら、
こっち来て」
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