第3話 #5

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あなたにふさわしい女になるには、どうしたらいいの? 私は、あなたのような 家も、財源も、 手に職も、 華やかな容姿も過去もない。 バツと、 罪と、 しがない環境と過去。 それしか、持ってないよ。 「俺の横 座って」「………はい」 二人の食事で、横に並んで食べるなんて 小さい子供とのペアの時位だ。 「昨日、どんなキスした?」 「え」 優とのこと聞いてるの? 「ど、どうして?」 そんな急に聞かれても思い出せない。 正造は、思わず口元を隠す私の手をパッと掴んでそれを阻止。 「いいから、言って」 「………………………」 昨日、 いや、 その前の日に不意討ちにされたキスしか思い出せない。 てか、 昨日、 キスしてない! 「してない…」 「は?」 そうだ、してない。 元々、夫とは、キスなんてしてなかった。セックスの時でさえも。 「昨日は、キスはしてない」 あっという間の出来事で、 ただ、 痛みと、 揺れる天井しか、覚えてない。 「虫歯多いとか?」 「そんな気遣いする人じゃないよ」 「なんだ?上木優、俺よりダメじゃんか」 そう言うと、 正造は、掴んだ私の腕をそのまま、私の腰付近に持ってきて 動きを阻止したまま、 唇を 重ねてきた。 「セックスより価値のあるキスで、昨日のことは生ゴミと一緒に捨ててやる」
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