第3話 #6

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正造が、和泉とおんなじことを言っても、 今の私には何にも響かない。 「優は、失ったから、取り戻したいだけなんだよ?」 首を横に振りながら 正造のポケットから飛び出した左手と冷たいままの右手で 自身の耳を塞いだ。 ″ 聞きたくない ″ 「そうかもしれないけど、だけど、 俺、もっと酷い男だと思ってたんだ。 だから、俺ならお前と子供、 幸せにできるって」 別れの言葉とか、聞きたくない。 「苺は、 ″ 上木 ″ に戻るのが、一番幸せになる近道なのかもしれない」 正造の、切り開く道を、 そばで見られない未来なんて それは、幸せな未来じゃないよ。 正造は、 拾って、しわしわになった、胎児の写真を そっと 私のポケットに仕舞い込んだ。 「もし、 お前が今度も幸せになれなかったら そんときは、俺が みんなまとめて引き受けるから」 「………………正造………」 「だから、お前は、戻れ」 「………………嫌だ」 すっかり、空は暗くなったのに 今日は、 ちゃんと 星が見えるなんて、 私の心と視界は、 おかしくなってしまったのかな?
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