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第3話 #6
「ま、来年の秋頃の予定だから、まだ先の話。
苺にも考える時間はたくさん有るからさ」
正造は、握っていた手を離して
今度は腕を私の首に回した。
「髪短くなったから寒いだろ?」
「ううん………」
時計が夕方の6時を指すころ、
グウゥと、
正造のお腹が鳴った。
「お腹、なんかいるよ」
「お前より食いしん坊な虫がいる」
「私、そんなに食いしん坊じゃないよ」
まだ、
私達には、時間がある。
まだ、
思い出を作れる。
「そこの店から、さっきから美味そうなチャンポンの匂いがするんだよな!」
「ね?私も思った!」
「早めの夕飯、行こうぜ」
「あ、待って!」
思い出は確実に残したい。
「あのハートゲートの向こうに立って」
「は?」
「正造の写真を撮りたい」
「………………一人で?やだよ」
「何照れてんのよ?
写真写るの慣れてるでしょ?それとも、写真に写ったら魂抜かれるとかおじいさんみたいに信じてるわけじゃ………」
「わかったよ、るせぇな、撮られたらいいんだろ?」
正造の、優しさも
誠意も
キレイな立ち姿も、
ちゃんと、記憶に焼き付けたい。
そのアーチのそばに立つ正造を、携帯カメラでとらえようとした時に
バッグから、
紙切れが落ちてしまう。
「あ、おい、何か飛んでくぞ!」
正造は、慌ててそれを走って拾い上げてくれた。
「………………なんだ、これ」
「あ」
紙切れなんかじゃない。
それは、
「豆?いや、
胎児………?」
この間、産婦人科でもらった超音波写真だった。
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