星術士と用心棒

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   頭を下げるクーシェ。男は下げられた頭をじっと見つめる。訪れた沈黙にクーシェは僅かな期待を膨らませたが、しかし返答が変わることはなかった。 「ダメだ。許可は出せない」 「そん、な……」  男の言葉にばっさりと切り捨てられ、クーシェはただただ悔しさに涙を滲ませるのであった。  クーシェ=クレニスカ。  若干十七歳ながら二級の国家認定星術士の称号を持つ少女である。  十七歳であるが、風貌は実年齢よりもずっと幼く見えた。大きな瞳をたたえた顔つきはまだあどけなさをたっぷりと残し、背丈は並を下回る他、その歳の少女ならば少しは膨らみがあっていいはずの胸には絶壁が聳え立っている。  暗い藍色の髪は無作法にもあちこちに跳ね、服装は実用性重視の非常に地味なものだ。『ボク』という一人称も合わせて、彼女には一般的にいう女性の魅力というのは皆無に近いものであった。  しかし、見るものが見れば彼女の瞳に宿った光に驚かされることだろう。  その目はいつでもまっすぐ夢を捉えていた。夢を捉え、そして歩き続けていくだけの強さを秘めていた。  
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