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しばらく間を置いてから、 先生は絞り出すような声で、 言った。 「…卒業、おめでとう…」 先生の涙声に、 堪えていた涙が 一気に溢れ出す。 教室に、彩加のひときわ大きな 泣き声が響き渡った。 「せんせー…」 「春山先生、ありがとー」 「…ありがとう、せんせー」 先生は、その言葉に 応える事さえ 出来ないようだった。 顔を伏せたまま、じっと 唇を噛み締めているのが分かる。 皆の泣き声の ボリュームが上がり、 教室は嗚咽と 鼻を啜る音に包まれた。 隣のクラスからは、 やけに陽気な笑い声と、 『タ・ナ・ベ!タ・ナ・ベ!』という、 なぜか息のぴったり合った 田辺コールが聞こえて来ていた。
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