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しかもまだ学校内である為、丁度帰り際の生徒達がまたかよ、というものっそい迷惑そうな眼差しをこちらに向けてくるが、誰一人としてそれを咎める者はいない。
それが例え、教師だろうが学年主任だろうが生徒会役員であろうが風紀委員であろうが校長であろうが、だ。
まぁお陰様で、僕もハーレム共の一員だと思われているのか授業中寝ていようが林檎食べていようが何も言われないのだけど。
「じゃあね八尋!」
何も考えずに歩いていたらいつの間にか幼なじみビッチちゃんの家の前を通り過ぎていたらしく、八尋と幼なじみビッチちゃんが結構遠くにいた。
幼なじみビッチちゃんと別れると八尋は直ぐ様僕の元に走って来て、爽やか鬱陶しい笑みを浮かべてやっと二人切りだね!とか気色悪いことを言ったから無視して自分の家に入ろうとした。
そう、した。
「し、志紀助けて!?」
一瞬いきなり上がった声量に驚きビクリと肩を震わせたが、なんだ、という風に勤めて平静を装って振り返った、ら。
なんとまぁ、如何にもファンタジーですといった魔法陣に飲み込まれている八尋がいた。
僕と八尋との距離は三メートル程で、手を伸ばしても届かない距離があり、ファンタジー小説にありがちな巻き込まれというのは無いらしい、良かった。
とか思っていると、八尋が完全に魔法陣に飲み込まれ、辺りに木霊していた八尋の声が消え、不気味なまでの静けさに包まれ、僕は少しだけ違和感を覚える。
この辺りは住宅街で、生活音に溢れてても可笑しくはない時間帯だ。
なのに何一つ物音がしない、聞こえるのは精々段々と早まっていく自分の拍動くらい。
まさか、ね。と馬鹿な推測をした自分を窘めて、路地に背を向け家の鍵を開けようとブレザーのポケットに手を入れた時、世界が歪み、暗転した。
ぐにゃり、とぐにぐに形を変えていくスライムよろしく歪む世界と、色彩を失って行く見慣れた景色。
あ、と思った時には何も無い、暗闇の中で何故か佇んでいた。
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