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ここはどこだ?
重い瞼を開けてみる。
眩しい、視界が黒から白へと移り変わる、完全に順応するには暫くの時間がかかった。
やっと光に適応した眼で辺りを見渡す。
視界の全てが白だ、真っ白だ。
白い部屋、それはこの場所を表すにはストレートで完璧な言葉だ。
まるで無菌室のような無機質で冷たい白い空間の中に俺はいる。
無意識の内にズボンのポケットに手が伸びる。
携帯電話は……無い。
地味な事に財布も無い。
誰かに連絡するのは無理だ、ここが何処かを特定するのも不可能。
俺は誰だ?
名前は黒筒 頼(クロツツ ライ)
天津ヶ丘学園2年4組に在籍している。
なんでこんな所にいるんだ?
……分からない、俺は確か…自宅のリビングで寝転がっていた筈なんだ。
部屋着のまま、裸足のまま、持ち物は何も無い。
そこまでは頭に残っている、ただ、瞼を閉じてからの記憶が無い。
落ち着こう、落ち着くんだ。
なんとかして家に戻るんだ、大丈夫、どうにかなる筈だ。
微かに震える右手をなんとかして抑える、こうは言っても心と体は落ち着いてなどいない。
必死に恐怖心をかき消そうとしても、それは霧のように手応えが無く、着実に俺へと纏わりついていく。
ピンポン。
突然の音に思わず体がビクつく。
目の前には扉が見える、上にはランプが付いており、ランプは緑色を示している。
通れって事なのか? ここでもし留まればどうなるんだろうか。
突然毒ガスが吹き出して死ぬとか?
部屋の壁が迫ってきてサンドイッチになるとか?
はたまた永遠にここに閉じ込められて死にゆく様をじっくり観察されるのか?
……変な映画の見過ぎか、でも…確証が無い今はそんな事ですら現実に起こりそうだと思わせるだけの力がある。
あの扉以外に出入り口らしきものは見当たらない、仕方ない、とりあえずは動こう。
扉はセンサー式の物だ、正面に俺が立つと、ゆっくりと扉は開いた。
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