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『…応答せよっ!…せよっ!』
コントロールルームに、途切れ途切れの通信が響く。
ただ残念な事にそこには誰もおらず、返事が返ることはなかった。
何光年かの旅を経て、真っ暗な宇宙空間を進む一隻の”船”。
その進行方向の先、青く美しい惑星を目指して。
そんな中、通信にも応答せず、コントロールルームを抜けた奥の部屋からは、鼻歌交じりの少女が呑気にシャワー真っ只中だった。
『まもなく、大気圏突入。進路アルファ、衝撃に注意ください』
「あら、そんな時間?」
少女は体を洗い流すと、急いでバスローブを羽織った。
予定よりも順調な宇宙の旅もまもなく終点。
濡れた足跡を残しながらコントロールルームへと進むと、向かうは入浴後の一杯だ。
「さてと…」
牛乳瓶片手にコントロールパネルを見ると、再び通信が始まった。
『言語インストールします…目標地点、日本。言語インストール中
…』
「ごほんっ、あーあー、こちらエリー、聞こえますかぁ?」
エリーが問い掛けるが、向こうから聞こえるのはノイズだけだった。
パネルを指先でタッチし、スライドさせる。
通信周波数は間違いないないはずなのだが、右上にエラーの表示に気付く。
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