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ちらっと年季の入ったデジタル時計に目をやると時刻は正午14時3分。
高校一年、一学期。
夏休み前の暑い夏の日ーー。
本来ならすでに家に着いているであろう時間なのに、僕はといえば昔からの友人であり、親友でもあり、悪友でもある「博士」を自転車の後ろに乗せて町をさまよっていた。
この博士、本来はヒロシと読むらしいが、幼い頃から度の強いメガネとボサボサの髪という出で立ちからハカセと呼ばれ今に至る。
僕はといえばガリガリ体型、究極の撫で肩。
そして側にいるということだけで助手と呼ばれ、いつしかマッドサイエンスというコンビ名で学校に旋風を起こしたこともあった。
のちにひょんなことから漫才師になれたとしたら、この由来を語ろうと思う。
「守はさー、彼女とか欲しくないわけ?」
「別にいいかな…。休みはゆっくり過ごしたいし、撮り貯めたアニメ消化しないとさ」
何気無い会話をしながら、助手とハカセを乗せた自転車は閑静な住宅街に入り、緩やかな下り道を通る。
「お前っ!高校生っていう青春時代は一度しかないんだぞ?俺たちみたいなオタは今この時期を逃したら化石になっちまう!!わかるだろうっ?」
言い得て妙とはこの事だ。僕たちみたいな冴えない奴らは、恋愛氷河期を乗り越えられず朽ち果て、化石になるのが関の山。
「わ、わかるよ、だからこうして付き合ってるんだろ」
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