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「…椎名…」 先生が、閉じていた 目を開いた。 「俺の頭の中、今、 誰のことでいっぱいだと思う?」 「……?」 わたしの思考回路は、 まだ半分以上が甘い余韻の中に 置き去りになっていて、 働こうとしない。 「…実は、お前じゃないんだ」 「……」 …え。 …誰…? 先生は真剣な表情で わたしの顔を見つめ、 「お前の、オヤジさん」 「……」 「ホックを外した瞬間、 …ものすごく悲しげな顔が、 目の前にぶわっと浮かんで来た」 「……」 …お父さんてば…。 わたしはがっくりと脱力した。 こんなところにまで 登場するなんて…。 いつまでたっても 子離れできないんだから、 …もう。 何の罪もない父に対し、 一人でプンスカしていると、 先生がわたしの頭を よいしょと持ち上げ、 くの字に曲げた自分の腕を その下に敷いた。
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