其の一

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あの男を殴ったために、右手が熱い。 あー蹴りも入れときゃよかった。 ちょっとだけストレス発散になったのにな……… 今双子の手を引き帰路についている。 もちろんあの男が帰ってきても家に入れる気は、ない。 私も頭を冷やす時間が必要だしね。 あの男も風邪引いて帰ってくればいいのにな…… 「おかさん、だいじょーぶ?」 「ぱぱ、うわきしたの??」 ……………なんで浮気って言葉知ってるのかなー?? 最近の子は成長が早くて怖いわぁ! 「大丈夫だよー さっ、早く帰ろっか!」 浮気についてはノーコメントでよろしく!! まっ、そのうち仲直りするでしょ?きっと! 自分のことだけど! 他人事じゃないけど! その時、不意に見覚えのある車が視界に入る。 『キキーーーーーーー!!!』 突然、ガードレールにその車は突っ込み、 私らの方へ向かって来る。 轢かれる!? とっさに、双子をかばい、 車に背を向ける。 あ、死ぬかも……… 今、この瞬間、あの男のことを本気で恨めしいと思った。 故意にやってんじゃないの!? そう思えるほど、間が悪い。 悪す ぎるよ………… 最後に見えたのは、双子のきつく瞼を閉じた顔だった。
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