其の五

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「すいません!何なんスか?誰!?」 「しっ!しーっ!大声出さないで!!」 よほど大声を出されたくないのか、ちゃっかりと人のことを抱きしめている。 いや、抱きしめているというか、締めているというか。 取り敢えず結構、痛い。 「だから最初に謝ったじゃないですか!!」 「いやっ、謝ればいいってもんじゃないだろ!?」 「そーゆー、変態さんこそ声でかいです!」 「変態ッッ!?」 え?変態さんじゃん? 暫く、変態さんはショックを受けたのか固まっていた。 しかも固まるのは大いに結構なのだが、人を抱き締めながら固まるのはやめて欲しい。 まったく、迷惑な変態さんだ。 恥ずいったらありゃしゃーない! てかさっきからなんなの? 慣れてないんすけど、こーゆーの。 こっちは初心な乙女なんだから、もうちょっと気を使って欲しい! お嫁に行けねぇべ?おいコラ? これをそーちゃんとかに見られても、恥ずかしすぎて今度こそ爆発するので離してもらおう。 うん、そうしよう! 「あのー離してください、固まるな、バカ」 「…………………………………」 「あのー、聞こえてます?………か?」 「…………………………………」 「おーい、耳くそつまちゃった………ですか?」 「……………………………………」 「おい、聞こえてんのか坊主?………さん?」 「……………………………………」 あ、こりゃダメっぽい。 そんなに“変態さん”ってダメだった?ショック? カルチャァァアアアア、ショック? 声聞こえんほど溜まってるんかいな? 耳元で叫んだら再起動する?するよね? 耳元で叫ぶために、後ろの変態さんの方向に首を回す。 体を動かすことで周りの木々が声を上げる。 うんむ…………もうちょっとのとこで振り向けない…………… ていうか意外と顔が近い、え。え? この人誰に断って人の首、顎置きにしてるわけ?
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