其の五

9/12
前へ
/80ページ
次へ
『ゴンッ』 「いッッ」 あら、いい音。 恥ずかしいあまりに、思わず頭突きをしてしまった。 多分相手の横顔に私の石頭が衝突したが、きっと神様は私を咎めはしないだろう。 いや、今まで混乱しすぎて気付かなかった私も私だが ちゃっかり密着してる変態さんの方がどう考えても悪い。 「邪魔です。変態さんどいて下さい。」 「え!?って、俺が変態!?」 「は?当たり前です!変態じゃなかったら助平ですか?」 「どちらも違うッッ!」 「てか、いい加減その汚い手を退かしてください。菌が移ったらどうしてくれんですか?」 「え?俺菌扱い…………?今のは結構傷つくんだが……………」 「え?ホントに?………嬉しい……………」 「ひどっ!てか、そっちが退いてくれないと無理だ…………」 「それを先に言ってくれません?トロ過ぎです。」 そっか、そっか。私がどかんと動けないのね。 でも向こうが固まってたから動けなかったんだし。 「俺が悪いのか………?」とブツブツ呟いている変態さんを無視して離れる。 あああ、心の安住……………! 我が心が平安を取り戻したぞォ……………!! でもやっぱり、一発拳をヒットさせないと気が済まん!! 私の平和の城を崩した罪は重いぞ…………………!! 「すいません、一発殴らせていただいても……………?」 「アタタ」と後頭部を押さえ立ち上がる変態さんに問いかける。 そんなに痛かった? 「え、ちょ、良くない、良くない! というか、話す時は人の顔を見ような!?」 ありゃ?やっぱ失礼だったかしら? まぁ、自覚はしてたけども。 実は私、さっきから後ろ向いて話してます。 「ごめんなさい、どうも変態さん相手だと拒否反応が出ちゃって……………」 「うっ、グサっときた、グサっと!」 そんなの知るかァ!
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加