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まぁ、不服ながらも礼儀がなっていないのは良くない。と思い、
「しょうがないですねー」なんて呟きながら変態さんの方を振り向く。
「そうそう!話す時は顔を見て………………………」
……………絶句。変態さんもまた、絶句していることに気づかないくらい、絶句。
変態さんは思っていたほど背も体格も大きくなく、木々に寄りかかるようにして立っていた。
その手は予想通り、私が頭突きしたであろう場所をゆっくりとさすっていた。
しかし、私は別に背が低いことに驚いたわけではない。
顔だ、顔。
私の目には学生時代、恋心を募らせた少年が映っていたのだ。
嘘………………………………………藤堂?
「藤堂………………………?」
「なんで俺の名前を、知っているんだ?」
はっと気付いた頃にはもう“時すでに遅し”
私、バカ。藤堂がこの世界にいるわけないじゃん。
これは…………別人………………
てか、こちらからしたら「なんで同じ名前なの?」だ。
藤堂にとても似ている変態さんは、警戒の意を表すように目を鋭くしている。
まずい……………一方的に名前を知ってるって、怪しすぎるじゃんかよ。
めっさ睨まれてるし…………………変質者とでも思われているのだろうか?
「藤堂って名前なんですか?」
取り敢えず、すっとぼけてみることにした。
「ああ、そうだが?どうした?知り合いにでも似てたか?」
あぁ、有りがちな誤魔化しかたね。相手は少しだけ上手らしい。
「いーえ、第一印象で呼んでみました。」
「は?」
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