其の五

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まぁ、不服ながらも礼儀がなっていないのは良くない。と思い、 「しょうがないですねー」なんて呟きながら変態さんの方を振り向く。 「そうそう!話す時は顔を見て………………………」 ……………絶句。変態さんもまた、絶句していることに気づかないくらい、絶句。 変態さんは思っていたほど背も体格も大きくなく、木々に寄りかかるようにして立っていた。 その手は予想通り、私が頭突きしたであろう場所をゆっくりとさすっていた。 しかし、私は別に背が低いことに驚いたわけではない。 顔だ、顔。 私の目には学生時代、恋心を募らせた少年が映っていたのだ。 嘘………………………………………藤堂? 「藤堂………………………?」 「なんで俺の名前を、知っているんだ?」 はっと気付いた頃にはもう“時すでに遅し” 私、バカ。藤堂がこの世界にいるわけないじゃん。 これは…………別人……………… てか、こちらからしたら「なんで同じ名前なの?」だ。 藤堂にとても似ている変態さんは、警戒の意を表すように目を鋭くしている。 まずい……………一方的に名前を知ってるって、怪しすぎるじゃんかよ。 めっさ睨まれてるし…………………変質者とでも思われているのだろうか? 「藤堂って名前なんですか?」 取り敢えず、すっとぼけてみることにした。 「ああ、そうだが?どうした?知り合いにでも似てたか?」 あぁ、有りがちな誤魔化しかたね。相手は少しだけ上手らしい。 「いーえ、第一印象で呼んでみました。」 「は?」
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