其の七

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『ザァァァアア』 雨は小さなシミから次第に地面を濃く侵食して行く。 囁くような雨音はいつしか周りの音をも消す程となっていた。 まるで私に向けられた罵声を煽り、私を責めているようだ。 道場主の近藤勇は、少し悩んだが心良く私を受け入れてくれた。 しかし、その親友だという土方歳三は変態さん以上の拒否反応を見せた。 無駄に美丈夫な顔を歪ませ鋭く睨まれ怒鳴られた時は、ちびるかと思った。 思わず俯いたくらいだ。 あのおっさんこぇぇぇえ……………… 恐怖を感じた私は小さな抵抗を残し逃げてきた。 双子はそーちゃんに預けていたので、今はぼぅっとしゃがみ柱に背を預けている。 今頃そーちゃんと遊んでるかな? おっさんに会ってないよね……………… 今日、帰るの大変そうだなぁ。雨ひどい。 お母さん、洗濯物取り込んだかなぁ。 心配、かけちゃってるよね……………………………ごめんなさい。 おっさんには当たり前のことを言われただけ。 別におっさんが悪いわけじゃない。あの反応は、普通。 でも、自分の考え方が周りと違うだけに、傷ついた。 人と違うのは時に、辛くなる。 別に自分が間違ってるとか、人と同じになろうとか思わないけど。 「てっめぇ……………こんなとこに居たのか!!さっきはよくも………………」 げ。おっさん…………………… 「ひ、人の大事なとこをォオ!!!」 小さな抵抗は効果絶大だったようだ。 「おい!聞いてんのか!?あぁ"!?」 「………………………うるさぃ」 「あぁ"?んだよ?」 「う、うるさいって言ってんです!!近づかないでください!」 「ん、だと……………!?」 俯けていた顔を上げ、出来る限りおっさんを睨みつける。 おっさんの迫力と怒声が怖くて目に涙が溜まるのがわかる。 でもそれは怒りを煽るだけで、逆効果だった。
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