其の八

3/16
前へ
/80ページ
次へ
「はぁぁあああああ………ったく、人のこと何だと思ってんだ。あのちょんまげども……」 女で悪かったな! てか、あんたらを産んだのはその、馬鹿にしてる“女”だろーが! 何?それとも男から産まれたんですか!?新種ですね。キモいです。 私は廊下を歩きながらブツブツ文句を言ってみた。 もちろんこんなことを言っても仕方ないことは分かっているけど、 今まで我慢してきたんだからちょっとくらい良くない? 『ドンッ』 「ひょぇっ!?」 やっぱ良くないかも。こんなこと言ってるから罰当たった…………… 文句に集中していた私は、目の前に人がいることに気づけかず直撃してしまった。 床、地味に痛いっす……………… 「あったた………あ、ごめんなさい!大丈夫ですか?……………………あ」 痛さに気が行ってしまい、謝るの忘れた!と、思い尻餅をつきながら謝ったら……………… もう、ヤダ………………恥ずすぐる!! 誰も見てないよね!?見られてたら一生笑もんなんだけど! 慌てて周りを見回す………………… 「変態さん………………」 後ろには私に声をかけようとしたのか、転んだ私を起こそうとしたのか。 片手を私の方へ差し出そうとしている中途半端な格好の変態さんがいた。 「見ちゃいました?」と目で問う。 いや、聞かなくても分かってるけど。もしかしたら、見てないかもしんないじゃん! 「え?は、いや、見てない!何も見てない!大丈夫だ! 瑠華が柱にぶつかって、柱に謝ったところなんて一切……………あ」 「あ」じゃねぇよ、「あ」じゃ。 わざとか?確信犯なのか?おい。 そして声がでかい、超でかい。誰かに聞こえてない………………くないっぽい。 私は思った。 優しさしい嘘は時に裏目に出るよね。 遠くない場所からドタドタという足音と、笑い声が聞こえるのを聞こえないふりをしながら。 文句言うのは控えます………………………因果応報、怖し。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加