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右手がカエルになってからも級友たちは変わらずに接してくれた。
男子はもちろん、女子も同情してくれていた。
なかでも、初等部から一緒に机を並べていたマリアは優しくしてくれた。
明るいお日様みたいな髪の色と、そばかすのある明るい笑顔。
いつも健康的で、ちょっとそそっかしいので実験をよく失敗していた。
でもいつも、落ち込まずに笑いとばしていた。
『ねえ、私もよく失敗するけど、別に死ぬわけじゃないわ。ヴィンの手だってカエルになっても死なないわ。大丈夫、ヴィンは誰よりも賢いんだもの。いつか自分で治せるわ』
そう言ってくれたのだ。
どれほど嬉しかったか。
そして、いつも右手がカエルになる度に袖を引っ張って隠すヴィンに、初めから右袖の長いセーターを編んでくれたのだ。
まるで、おとぎ話のカエルの王子の魔法を解いてくれる......
「ああ、もしかしたらキスしたら解けるかもな」
酔っ払って師匠がニヤニヤして言ったのだ。
藁にもすがる思いのヴィンは、まんまとそれを信じてしまった。
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