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◆
今思い出してもちょっと辛い。
僕は言葉を間違った。
マリアとは20歳の時に和解した。
マリアが隣町に嫁に行く前に。
『ごめんね、ヴィン。私あの時、キスが嫌だったんじゃないの。それだけが目的みたいに言われて、ショックだったのよ』
そう言って、人のものになる彼女は綺麗に笑った。
ヴィンは、家事が苦手だという彼女に火傷や擦り傷に効く薬を調合してあげた。
「いや、僕こそごめんね。子供だった。」
丘の上からは、育った小さな街が見渡せる。
二人が通った学校も、家も、あの森も。
「私、昔からヴィンのことが好きだったのよ」
ヴィンは、俯いた。
「そうなんだ」
ポケットに右手を入れる。
「ひどいことを言ってごめんね。いつかヴィンにも、受け入れてくれるひとが現れるわ」
彼女は手を振って丘を下りていった。
優しい彼女は、心のどこかでずっと気にしていたんだろう。足取りが軽かった。
ぐしぐしと布団にくるまって泣いた。
「今更好きだったなんて、そんなの聞いてなんになるって言うんだよ......聞かなかったほうが良かったよ......好きならキスさせてくれたって......今日でも良かったのに......ゴメンネのキスとかもうなんでも良いからさあ......ひどいよマリア......うう」
ヴィンセント、20歳の夏。
ガラスの十代はヒビだらけ。
「ヴィンー、俺さあ、売り物の媚薬使い込んじゃってさー。わけてくんね?」
師匠(娼館帰り香りつき)が布団の中に滑り込む。
「寄るな!女抱いた体で寄るな触るな近寄るな!!」
「どしたのよ、女嫌いになっちゃったのか?」
「ふざけんな!誰のせいだ!あと、女は嫌いじゃない。今は人間嫌いなんだよお前も含めてなっ」
屋根の一部が割れました。
散らばった媚薬は師匠が後で美味しく頂きました(美熟女を)
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