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◆
「......というわけで今日は夢見が悪くて」
ヴィンセントは師匠の前に紅茶を置いた
。
「ふーん。そんな事もあったっけなあ」
もう、十年たつので傷は癒えた。
けれど。
「許せないのはね、マリアじゃなくて。
アンタの言う事を真に受けた自分ですよ」
カップを持つ手が震える。
「キスしても呪い解けないじゃないですか!」
「何それ?俺そんなこと言ったっけ?」
「またどうせ適当に言ったんでしょう!
そのせいで俺はマリアに......」
師匠はヘラヘラ笑っている。
「ん?でも解けないってわかったって。キスしたんだな。オメデト。いつ?誰?」
「......24歳のとき......リア......」
「えー?人妻と!やるじゃんお前」
「違う!!......マリアの、娘に無理矢理」
セシリアちゃん(3歳)にファーストキスを奪われました。
「ぎゃはははは。そーか、呪い解けなかったか。可哀想に」
「まあ、もう手のことはある程度諦めてますけどね」
ヴィンが紅茶のお代わりを勧める。
「落ち着いたなあ、ヴィン。
まあ手は良いとしても、あっちの卒業は諦めんなよ」
「アンタにだけは言われたくないです。いい歳こいて腰痛めるまで馬鹿ですか師匠」
頼まれた膏薬を机に置く。
「もう、一生清らかに生きるのも悪くないかもしれませんね。師匠みたいに人妻に手出して旦那に包丁持って追われる事も無いですし。
ああ、そうそう。どこかの神殿の巫女さんと文通でも出来たら僕はそれで満足です。」
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