アルケミストの初恋

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おや、と師匠は首を捻った。 ヴィンがいつもにも増して枯れている。 おかしい。 目を細めて意識を集中する。 「お前、徹夜って薬草使ってたか?」 「あ、はい。そうですけど」 「精力落ちてるぞ。あの草を扱うときは中一日空けろって教えただろーが」 「別にいいですよ、精力なんて落ちても。むしろない方が良いんだ僕なんて」 ヴィン、凪いだ海のような目をしています。 「精力っつーか、お前、煩悩は明日への活力だぞ。とりあえず治してやるよ」 背中のツボに膝を当てて押す。 ベキバキボキ。 「痛い......」 「ほら、これで元気になるから」 「......いらんことばっかりしやがって。」 ヴィンが舌打ちする。 「使い道のない精力が、どれだけ邪魔かアンタにわかるかよ」 「俺なんか常に足りないぞ!!」 「威張るなエロ師匠め」 「やんのかチェリー小僧!!」 「上等だ、表出ろや!!」 ヴィンセント27歳、師匠と腐れ縁。 師匠シーザー42歳(厄年) つーかこの人が厄そのもの。 何だかんだ言って仲いいようです。
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