39人が本棚に入れています
本棚に追加
フォー、ホルモン焼き、トムヤンクン、ナシゴレン。
行ったことのない異国の料理。
全て、達也が私に教えてくれた。
食に関してもあまり冒険しようとしない私には、食べたことのないものばかりだった。
ーー俺も海外なんて、ハワイにしか行ったことがないよ。
そんなことを言いながら。
ハワイには、誰と行ったのか。それはわかり切ったことだ。
ーー海外旅行経験があるだけいいじゃない。私なんて1度もないわ。
私は気にしない風を装いながらも、少し嫌な気分になった。
「え?水村さん、映画なんか観るんですか?1人で観るんですか?」
まただ。
羅夢の不躾な言い方に少し腹が立った。
けれど、もう慣れていたから、平静を装った。
「う~ん。だいたい友達と、かな。
1人で観に行くと、私、寝てしまうの」
私が声を立てて笑うのに、羅夢はトングを使い、無表情のままシーザーサラダを自分の分だけ取り分ける。
わざと無視するみたいに。
彼女と時間を共にするうち、ところどころに私を見下す態度が垣間見え、否が応でも不愉快な気持ちになった。
最初のコメントを投稿しよう!