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四月に入ったとはいえ、思ったより外の空気は冷たかった。
上着を着てくれば良かったかなと後悔したが、家族に見つからないように玄関から脱出してきたことを考えると、もう一度同じルートを往復する気にはなれなかった。
門を後ろ手にそっと閉め、サンダルの足音を気にしながらぐるりと裏手に回る。
塀と塀の間の狭い小路を進んで行くと、家の裏の空き地に立つ大きな桜の
木が見えて来た。
その太い枝の上に座っている黒い人影を見つけ、足を止める。
俊輔はすぐにこちらに気付き、特に驚く様子もなく軽く手を上げてみせた。
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