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「今、母ちゃんから父ちゃんに電話来ててさ」 「……お母さんから?」 「うん。俺にあんま聞かせたくない話みたいだったから、出て来た」 「……」  お母さん、……本当にもう、あの部屋にいないんだ。  兄から聞かされた話を俊輔本人の口から聞いたことで、今さらじわじわと実感が湧き始める。 「東京に、……行っちゃうの?」  下から見上げると、俊輔の身体が満開の桜に優しく包まれているように見える。 「うん、たぶん」  その目に光るものが見えた気がして、わたしは急いで下を向き、「そっか」と呟いてゴツゴツした根っこにサンダル履きの足をかけた。 「─ま、東京なんて近いもんだよ」  俊輔はのんびりした口調で言った。
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