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『なんで俊輔がついて行かないとなんねーの?』  ずっと頭の隅に引っかかっていた兄の言葉が徐々に膨ふくらみ、頭の中を埋めていく。 『だって、よそに男作ったのは母ちゃんの方なんだからさ。 勝手に一人で出て行けばいいじゃん』  ─その通りだ、と思った。  自分でも、子どもっぽい考えであることは分かっている。  俊輔が使っている上履き入れや、給食袋や、ランチョンマットを作ったのが誰なのか。  俊輔の大好きなハンバーグや、カレーや、肉団子スープを作ってきたのが誰なのか。  ─俊輔にとってそのすべてがどれだけ大切なものなのか、そう考えればそんな単純な話じゃないことは分かる。
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