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それでも、理不尽な理由で俊輔が遠くに行ってしまうことが、
─大人の都合がわたしたちからあっさり俊輔を奪って行ってしまうことが、そして何より、俊輔をこんなにも傷つけていることが、
ただ悔しくて腹立たしくて、─悲しくてたまらなかった。
「どうしても、行かなきゃダメ?」
「……」
「こっちで、お父さんと暮らすとか……出来ないの?」
俊輔は、すぐには答えなかった。
目の前のスニーカーはぴたりと動きを止めている。
沈黙が続くにつれ、言わなければよかった、という気持ちが膨らみ始めた。
俊輔のお母さんの、優しい笑顔ばかりがちらついた。
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