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 所在なく手のひらでゴツゴツした幹の表面を撫でながら、自分の発した子どもっぽい言葉への罪悪感から逃れるように視線を上げると、  坂の下に広がる街並みが点々と光をちりばめているのが見えた。  東京の夜には、この何百倍もの光が溢れているのだろう。 「─ほんとは、俺、残りたいよ」  長い沈黙の後、俊輔が言った。 「だってさ、……あっちについて行ったら俺、絶対ジャマじゃね?  変に気ぃ使われるのとか逆にキツイし。 それに、……俺までいなくなって父ちゃんが一人になったらかわいそうかなーとか、思うじゃん。 だけど」 「……」 「だけど、……父ちゃんが、言うんだよ。 お前は母ちゃんについて行った方がいいって。 俺は一人になっても大丈夫だって、そう言うからさ。 そんなこと言われたら、俺だって……」  そこで、言葉は途切れた。
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