慣性の法則

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次は、高所昇降訓練である。 犯人は、高い所に登ったり、逆に上手く飛び降りたりする可能性がある。 それを追跡する訓練として上り下りのタイムを計る。 高さ10mの台の上にある旗を取って、降りて来るまでのタイムだ。 江川にとってこれは、もうお遊びの次元だ。 水平移動は関係無いが、垂直移動に関して言えば、位置エネルギーが変化するので、何か他のエネルギーを位置エネルギーに変えることで、彼は高所に移動し、位置エネルギーを何か他のエネルギーに変えることで低所に移動することができる。 簡単に言えば、彼は上下に関してだけ瞬間移動ができるのである。 まぁ、これは俺にとっても簡単だ。 地面を蹴る瞬間だけ自分の身体の慣性を無効化する。 そうすれば、身体のその場に留まろうとする力が無くなるので、人間の蹴る力だけで大きな速度を得ることができる。 勢いよく飛び上がったら、慣性無効化を解いて、重力や空気抵抗で急停止しないようにする。 旗を取ったら、飛び降りて、地面に着く寸前に慣性無効化。 今度は自分が鉄球の立場になって、衝撃を無くすのである。 瞬間移動した江川には劣るが、俺もまぁまぁのタイムだ。
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