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「……」
これ以上、本田を異常な状態に導きたくない光流は祝詞奏上をやめた。光流に「助けるな」と言ったゆき乃も、さすがに絶叫する本田を不安そうに見る。
「一部まだ切り離されていない魂が絡みあっているようですね」
豊川は片膝を地について本田を見つめ、そのもがき苦しむ原因を探り当てた。
「じゃあ、もう一度切り離す」
そう言って、手を振り上げた光流に豊川は首を振った。
「それでは、両者の魂に傷がついてしまいます。毛細血管のように複雑に絡んでいますから」
「う……」
思わず光流は顔をしかめた。そして考え込む。
「それじゃ、二人は離れられないってことですか」
そう尋ねるゆき乃の耳と尾は、力なく垂れる。
「今までのように共存できればいいのですが、反発しあう今では共存は難しいでしょうね」
「それじゃ、一体どうすれば……」
豊川の答えを聞いたゆき乃の耳と尾は、ますます力を失った。
「ほっとけばいいんやさ」
「しかし、お美津狐。このまま放っておくのはあまりにも酷では」
「荼枳尼天様もお人好しすぎるんやさ。こやつのせいで犠牲になった者たちを忘れたらあかん」
「……そうです、ね」
豊川は眉を寄せた。そのとき、式神たちの会話をジッと聞いていた光流が口を開く。
「先生、中将は優秀な守護だったんですよね」
「はい。人の心も、妖の心も、神の心も理解できる特別優秀な守護でした。鬼となる前は……」
「そっか、じゃあ……鬼じゃなくせばいいワケだ」
「きゃっ」
光流は笑顔を浮かべ、ゆき乃の腕を掴んで引き寄せた。
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