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「確かに笑ったり怒ったり泣いたり、見てて飽きないかもな」と小さく呟く。
きっと朝のホームルームで豊川はゆき乃の驚く顔を見て、微笑んだに違いない。
「これから先生は見れないのか……」光流は窓の外のスカイツリーと夕方の空に流れゆく雲を眺めた。
「実際に見れなくたって目に浮かんできます。想像するだけで僕は楽しみで仕方がないのです」そう言う豊川の声が聞こえた気がした。
「ぷっ、言いそう」光流は吹き出して、口元を押さえる。
「藤原さん?」
窓際で笑いを堪える光流にゆき乃が声をかける。なぜかゆき乃は微笑んでいる。主である光流の心に共鳴したようだ。
「ゆき乃、疲れてるだろうから今日は帰ってゆっくり休め」
「私、藤原さんほど疲れていません。さっき藤原さんがそう言ったんですよ」
ゆき乃は不満そうに唇を尖らせながら言った。「お前の表情筋どうなってんだよ。アスリート並だな」とコロコロと表情を変えるゆき乃に光流は心の中でツッコミを入れながら、もっと色々な表情も見てみたいと思った。
「疲れてないって言うなら、メシでも食いに行くか。お前が回復すれば、葛の葉姫も安倍晴明も早く復活するかも知れないし」
「はい!」
ゆき乃は、大きく頷いてさらに嬉しそうに微笑む。その、花が咲いたような満面の笑みは、温かい気持ちにさせる神通力のような力があった。
「これか。この笑顔、大切にしよう……センセの分も」心の中でそう誓うと光流はゆき乃の髪をポンポンと撫でた。
「藤原さん?」驚いた表情で光流を見上げるゆき乃。
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