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紅木の茶托は大振りの矩形(くけい)で、上には磁器の茶壺(急須)、茶杯(湯飲み)、茶海(水差し)が、鑑賞用のような配置で並べられている。
産まれて初めて茶具を目にした都季は、背を丸めてそれを覗きこんだ。
「背を伸ばしなさい。だらしない」
妙児は、すかさず都季を睨みつけた。
都季には、茶を通じて起居動作を覚えさせようと考えていたのである。
「足を重ね過ぎてはいけません。
座高が高く見えてしまうでしょう」
「背を丸めるなと何度言えば分かるのです。腹に力を入れなさい」
「胸を張って、顎を引く」
「肩の力は抜きなさい」
しかし、先が思いやられるなと妙児は思った。
都季は顔を曇らせるばかりで、性根が全く入っていないのだ。
洗濯よりも苦になる、と思っているようにも見える。
しかも、シノもまた手がかかるのだ。
シノは、以前教えた茶の名前を覚えていたが、淹れ方の手順を忘れているのである。
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