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普通は、逆ではないか、と妙児は思った。
頭のみで覚えるより、それに視覚と動作が加わる方が、断然忘れにくい筈である。
しかし、シノは「次はどうでしたっけ」と何度も尋ねるのだ。
いや、自信がないから確認をしているのか。
妙児はそう思おうとしたが、シノの悩んだ顔を見ているうちに、はたして本当に確認の為だろうか、と思い始めていた。
「今日は私が淹れましょう。見て覚えなさい」
妙児はシノと席を変わると、茶罐(ちゃづつ)の蓋を両手で取った。
「先ず、茶葉を目で確認します。
銘柄を信用してはいけませんよ。
最上級の茶でも、保存状態が悪ければ粗茶になってしまいます。
この茶葉は青々として、このままでも香りが豊かでしょう。これが最上級の緑茶です」
手の上に少しだけ取った茶葉を二人の鼻先に出してやると、シノは「へえ」と、興味を持った顔をした。都季は、分かったように頷いている。
この二人の性格は全く違うな、と妙児は思った。
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