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「手で触れた茶葉は、茶罐に戻してはいけませんよ。
茶罐から葉を取り出す時も、手で触れないように」
茶壺には、茶葉が入れやすいように、茶漏(ちゃろう)と呼ばれる漏斗をはめている。
妙児はそこに、茶杓を使って茶葉を入れた。
「高級な緑茶には、ぬるめの湯がいいので、熱湯は一度、茶海で冷ましてから茶壺に注ぎなさい」
***
高い位置から注がれた湯が、茶壺の底でじょぼじょぼと音を響かせている。
都季は、その音を聞きながら目を閉じた。
さして珍しくもない湯の音である。細い湯を注がば、どこでなりと同じ音を耳にする。しかし、かような音にこれまで耳を傾けたことは無かった。
座して待つというのは不思議である。
考えねばならぬことは山ほどあるのに、一先ずそれを置いてしまう。
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