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都季は、空気が張り詰めているからだろうかと思った。妙児が納得する姿勢から、ほんの少しでもずれれば、直ぐに怒号が飛んでくるのだ。美しい姿勢を保つのは苦であったが、背筋をぴんと伸ばすと気が引き締まった。
***
「茶葉を蒸らします」
湯音が途切れた。
都季が目を開けると、妙児は茶壺の蓋を乗せたところだった。所作の全てが両手で行われているところに、茶具を大切に扱う気持ちが見て取れる。
「蒸らし終えた時に、茶葉が茶壺いっぱいに広がっているのが茶を美味しくいただける基本の分量ですが――。
人には好みがあります。茶を淹れる者は、決して驕った茶を飲ませてはなりません」
都季とシノは「はあ」と一往相槌を打ったが、お互いに、分かる?と訊きあうかのように目と目を見交わした。
まだ子供の二人には、妙児の言わんとすることが通じない。
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