第3話

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「茶に限ったことではありませんよ。 驕慢な人は、自分本位な考えを他人に押しつけてしまいます。 お前達は“人”という字を知っていますか?」 「知ってます」 都季は、胸を張って答えた。素早い返答である。他の字も訊いてほしいという目で膝を乗り出している。 もっと難しい字も知ってる、と言いたいのだな、と妙児は思った。 「私も……、そのくらいの字なら……」 少し遅れてシノが言った。 よく目にする簡単な字なら、幾つか覚えているのだろう。都季と自分を比べたのか、少し恥ずかしそうに俯いた。 「人という字は支えあっているでしょう。誰かの支えがあるからこそ人なんです。 自分本位にならず、相手のことを考えるというのは大事なことですよ。 いつでも真心という言葉を胸に置きなさい。真心を込めて接すれば、それは相手にも伝わるのです」
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