第3話

29/35
前へ
/35ページ
次へ
妙児はこの言葉を、特に都季に言い聞かせたかった。都季は、高慢になる気がしたのだ。この性格を正しておかねば、好かれる女にはなれないと思った。 一度、どこかで鼻をへし折っておく必要があるか――。 もしや厄介なことを引き受けてしまったのでは、という思いが沸きつつあった。 *** 朝餉を終えると、妙児は塾に都季を同伴させた。 塾は敷地内の北西にあり、ここでは明光(めいこう)、冬谷(とうこく)という二人の指南役が、芸事、学門、作法を教えていた。 見習いは、塾の二階で寝起きする。 夜明けと共に布団を上げ、見習いに決められた浅葱の着物に袖を通すと、洗い場の井戸が下女に占領されてしまう前に、皆で連なって井戸へ顔を洗いに行く。そして、その足で調理場に隣接した食房へ行き、朝餉の粥を食す。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加