第3話

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見習いは、娼妓が産んだ娘であったり、親に売られた娘、親を亡くした娘、と様々な境遇を抱えている。七歳という年少の娘らの中には、子供同士で喧嘩した時や、指南役に叱られた際に、母の名を口にして長々と泣く娘もいるが、それらの世話をするのが年長者の務めである。 ここでは皆がそのように支え合って生活している為、友との結びつきは、親との縁よりも濃かった。 *** 都季は塾を訪れた時、彼女らのまとわりつくような視線が気持ち悪いと思った。 戸口から奥に伸びた廊下を、妙児に続いて進んでいると、右手に広間があったのだ。 広間は、廊下側の障子も縁側の障子も全て取り外されていた。 そこに居た二十人ほどの見習いは、都季の姿に気付くと、この下女は何だ、と言わんばかりの顔で談笑を止めたのである。 「何故、あの下女は仕事もしないで妙児さんと一緒にいるのかしら」 誰かの囁いた声が聞こえてきた。 都季は、そんなこと言われても私も知らないよ、と思った。
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