第3話

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「この子に“受け”が出来るなら、私もちっとは楽になるんじゃろうけどねえ。 字を教えにゃならんなら……」 家母の口調は渋っている。 妙児はすかさず口を開いた。 「その心配には及ばないかと。 どうやら、都季は字が読めるようです」 思わぬところで自分の名が出て、都季は「え」と妙児に目をやった。 妙児と家母が何の話をしているのか分からない。しかし、家母が都季を見る目は、大丈夫だろうか、と言わんばかりの、人を疑っているものである。 都季は全ての字を知っている訳ではない。 ここは、あまり知らない、と事実を話した方がいいと思った。 「妙児さん、あの……」 「字を知っているのでしょう?」 妙児の冷ややかな声が、都季の言葉を遮った。 しかも、目の端で都季を睨んでいる。
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