第3話

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茶芸の時か――。 都季は思った。 人という字の知否を訊かれた時だ。 妙児が何も訊いてくれなかった為、とうとう口には出せなかったが、あの時はもっと字を知っていると言いたくて仕方なかった。 「はよ答えんかいね。 どうじゃ。字が読めるんか」 家母は帳場の机をしきりと叩いた。 その背には、小さな札がびっしりと掛けられている。娼妓の名札である。 名札が、かたかたと揺れた。 「少し……、読めます」 都季は肩を竦めた。 あまり読めない。 少し読める。 どちらも同じ意味に思えるが、後者の方が断然聞こえがよい。 「ふん」 家母は面白くなさそうに鼻を鳴らした。 4話へつづく――
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