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「まったく……どこ行ってもピィピィうるさい奴等だぜ…………」
喧騒から離れた人物、彼女が背後で聞こえる怒号や悲鳴に背中を向けたまま呟き、先にいる1匹のゾンビを鋭い眼光で見据える
砂を浚う風に、遅れて両者の間に回転草が音もなく跳ね、転がって行った
「知り合いですか?……エイゼルさん」
「ん……まぁ、昔ちょっとな……こんな所にいたんかよ…………アタシの手でぶっ殺してやりたかったぜアンタ……まぁ、今日はアンタをキッチリ終わらしてやるよ」
風に揺れるドレス、隣にたまたま居たマクガイバーがゾンビに憐れみの目を向ける
ゾンビと言えど生前がある、同じように人生を生きていたのだ、接点がある者のいるだろう
生前を知る者の胸中は?知り合いがゾンビとして迷っていたとしたら?
マクガイバーにはエイゼルの心境が推し量れなかった
「エイゼルさん……俺がやりましょうか?…………苦しまないようにしますよ、俺なら……」
「いや……見つちまったんだ、アタシが送るのが筋だろうさ」
構えた弓から矢を外しマクガイバーは頷き、エイゼルの隣から離れた
「エイゼルさん……御武運を……」
「大袈裟、楽勝だよ……さて、やるか……」
少し笑い、去っていく足音が遠ざかるのを聞く
ゾンビがエイゼルに気が付き向きを変えるとその風貌通り老人の如くヨボヨボと歩いて近づき、フガフガと入れ歯が無くなった歯茎を剥き出しに迫る
「おー?あのジィさんゾンビ」
「なんだバロウ……あー、何年か前に屋台で飯食って……50ギド足りなくてまけろまけねぇって喧嘩になった屋台のジィさんかー、懐かしいなぁ、ゾンビなってたん……寝てると危ないぞマクガイバー」
「小さいよエイゼルさん」
バロウと穴宮の隣を通ったマクガイバーがステンと転び、エイゼルが細い腕でジィさんを思い切り殴りつける
フラフラと後退するジジィ
その僅かに空いた距離をスプリングで仕込まれたかの様な瞬発力で潰し、飛び跳ね、ジジィの顔を太股に挟み腕を振り勢いをつけ、そのまま体を仰け反らせる
「喰らいな!!ク○ニ!!ドライバー!!」
実際ただのフランケンシュタイナーである
だがジジィはかなり体にガタが来ていたのか、条件反射でエイゼルの女性自身に噛みついたはいいが首がスポンと抜け、エイゼルは強かに後頭部を強打した
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