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その言葉に松田先生は
目をまん丸くした後、
満面の笑みを浮かべた。
「5年ぶりに呼んでくれたな」
この病気になった時から
呼べなくなった松田先生の名前。
俺は患者で
松田先生は担当医。
そう感じて自分から
作ってしまった松田先生との
間にあった壁が
ようやく壊せた気がする。
「早く行け」
「ああ」
さゆりを抱き上げ
壁にうなだれている
二宮にも言葉を落とした。
「二宮、今まで
伊吹総合病院を支えてくれて
ありがとう」
その言葉にゆるゆると
持ちあがって来た二宮の瞳に
もうひとつ言葉を落とす。
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