親友

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「俺は移植を受けて、 これからも伊吹総合病院を 守って行くつもりだ。 …理事長ではなく医師として」 それだけで二宮は 悟ったのだろう。 悔しそうに噛みしめられた 二宮の唇を虚しい思いで見おろし 俺はその場を去った。 こんな事をしなければ… いずれ二宮に理事長を 引き継いでもらう可能性だって ゼロではなかったのに。 さゆりを抱き抱え、 俺は急いで救命センターへと 足を進めていた。 時折ビクンと痙攣を起こす さゆりに必死で呼びかけながら。 「さゆり、もう少しだから 我慢しろよ。 絶対にお前を助けてやる」 病院の駐車場を抜け あと少しで入口に辿り着く手前。 ふいに感じた視線。 見つめた先には 呆然と俺とさゆりを見つめる 亜希ちゃんと…紗枝がいた…。
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