第六夜・上弦の月

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半分だけ顔を隠した月が青白い顔で震えていました。小さな男の子と女の子がそれを見てこそこそと囁きあいました。なにを話していたかはわかりません。小さな声は二人の間に仕舞われました。二人の子供は湖に映る月を見ました。それから空に浮かぶ月を見ました。そして互いの顔を見て、ふふふ、と笑いました。今度はさっきより少しだけ大きな声で囁きあいました。僕は空。私は湖。そう言って、二つの月に手を伸ばしました。男の子は空高く昇り、女の子は水底深くに沈みました。二つの小さな手が月を掴み、そのままそこに溶けました。 今夜のお話はこれで終わりです。
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